白石一文「私という運命について」

白石一文と云えば「一瞬の光」で華々しくデビューしたあとは「僕の中の壊れていない部分」などヒットを連発させていまして、そろそろ大物認定されそうですけれども、正直僕は「一瞬の光」以外の作品のどこがいいのか判らない。

というのも、彼の作品は全て同じ方法論、つまり彼が会社に勤めていたバブル時代の話で、大体バブルが弾けて人々が無情を思うという話で、その中に適当な恋愛話を突っ込んで満足している、全く以って糞。

では何故売れるのか、それは装丁の良さに他ならない、まぁ、あと強いてあげるなら題名か、特に「僕の中の壊れていない部分」の装丁はパーフェクトで、あの装丁で売れない小説はないと思ったし、装丁の良さが何故か小説自体の価値も上げてしまっている、不思議なことだ。

で、この作品はどうだったのかというと、いつも通りでした、何も変わらず、運命を選択するということについて掘り下げられているのだけどそれに至って意味不明、「私はあの最後を描きたかったんですよ!」と自身満々に言っている姿が思い浮かぶような染み垂れたラストにもうんざり、あー、無駄に直木賞とか取りそうで怖い。