ノミソング

オペラ・ロック(紙ジャケット仕様)

渋谷駅から青山方向へ歩き246号線とぶつかった辺りにある糞ミニシアターで「KLAUS NOMI(クラウスノミ)」のドキュメンタリー映画を見てまいりました。映画としては二流、しかしやはり「ノミ」の圧倒的なパワーと破綻していく人生を辿ると自然に涙が出てきてしまった。

「クラウスノミ」なんて言っても知っている方は少ないのだろうけれど、70年代後半から80年代にかけてニューヨークと欧州に一代ムーブメントを起こし、その奇抜なファッション性と、「ニュウェーブロック」と「オペラ」の融合を目指した「オペラロック」なる試みは高久評価されている。

まぁ、音楽的にはどうなんだろう、と言った疑問は正直ありまして、方法論的にはベルベットアンダーグラウンドのような砕けた音にファルセットを載せていく感じなのですが、そこまで評価できるようなものでもない。勿論、当時の影響下の中では多少の新しさがあり、進みすぎた前衛的音楽と対比したりすると洗練されたりしているのですが、今聞くと意味の判らなさが初めに介在します。

それよりもノミが素晴らしかった点はやはり空間性、すなわち自らが立つそのステージに自分の世界観を持って入り込み、物語を挿入する、しかも全く意味が判らない物語を、そして彼のファルセットをサビに押し込む―これは本当に押し込むという言葉が似合う―ことで動き出す時間、これこそノミにしか出来ない荒業、と思わせる。


結局ノミはエイズで39年の短い人生に幕を閉じるのだが、彼が生きていたらいったいどういった音楽シーンを作り上げていったのか、今でも気になっている。