長い長い休暇にもお別れを告げて、また新たな日常生活が始まるのだが、ダイヤモンドみたいな空から入道雲が消えるこの時期になると、あれほど厭であった夏の湿っぽさも懐かしくなるから情緒というものも不思議である。

上野から山手線でぶらぶらと揺られていると、同じ制服を着た、まるで似たような人種の人々が少しづつ電車の中に溢れかえり、久しぶりに見る顔を見つけてははにかみ、やぁ元気だったかい、等と話を交わす。私もその群れの中に入り込み、私は元気だったけど君はどうだい、と返す。まるでそれが新しい日常生活をスタートさせる上での決まり文句みたいに。


池袋で大挙して乗客たちが降りてゆき、私は隅に体を持たれかける。そして窓に映る自分の顔と、空にかさばる至って普通の雲を比べては新大久保までの短い時間を夢心地に過ごす。