心に残った小説ベスト10どころか100どころか
心に残った小説ベスト10
http://d.hatena.ne.jp/kuroneko_kun/20080111/p2
谷間の百合の方で思いつきの企画を立ててみたのですが、自分でももちろんやってみます。「一人も書いてくれなかったら私がベスト100書きます^^」とか言っていますけれどもなんとか幾人かの有志の方々が思いのたけをぶつけてくれましたので嬉しい限りです。でも、書きたいのでベスト100を書いちゃいます。かなり自己満足的です。(集計はベスト10まで)(そして途中からかなり順不同です)
1:谷間の百合(オノレ・ド・バルザック)
自分のサイト名にするくらい愛してやまないバルザックの真骨頂。もともとフランス文学(しかも無駄に古典)に傾倒し始めたのもバルザックの美しい文章からが始まりで、運命と言っても過言でないくらい私にとっては大きな意味を持つ出会いであり、唯一無二の谷間の百合。こんな私の感想など読まずにすぐにでもページを捲って欲しい、美しい小説。
2:イジチュールまたはエルベノンの狂気(ステファヌ・マラルメ)
これは小説ではありません、と言われてしまえばそれまでの恐らく詩に分類されるべきものなのだけれども、これは壮大な小説であると私は思う。白紙の中に描かれた断片化された文字の集合体が観る者の眼球にトリップ、さらにゲシュタルト崩壊。これぞ純文学でなくていったい何が純文学であろうか。イデと聖歌として そこから 劇=イデ 主人公=聖歌 そしてそれが形成する 全ドラマ 或いは 神秘。
3:さようなら、ギャングたち(高橋源一郎)
何度読み直したか判らないほど本がボロボロに。吉本隆明が言うように、これまでの日本人が推し進めてきた幻想的私小説の坂を登り詰めた象徴的な作品であると思う。読みながら、私は涙が止まらなかった。
4:虚人たち(筒井康孝)
ジェイムスジョイスがユリシーズにおいて体言化した時間と小説の融合を、筒井康隆が更に飛躍させた小説。途中、主人公が気絶するシーン、数ページの間、白紙が続く。これで私の心はパーフェクトにノックアウトされてしまった。一ページ一分間の世界を少しばかり体験出来る。
一番影響を受けた小説家は誰か、と問われれば真っ先に答えざるを得ない舞城王太郎。文体の衝撃を初めて受けたというか、ここまで常識を外れた方法論で文章を描く人を見たことがなかった。町田康や村上春樹があっての舞城王太郎なのかもしれないが、あえて言うなら、マラルメに一番近い気がした。
6:恐るべき子供たち(ジャン・コクト)
アガートは大好きさ、フレガートが。
三大奇書などと呼ばれることが多いこの小説。小説というよりもオカルティズムが爆発した学術書のようであり、後世のミステリに絶大な影響を与えた。再読に再読を重ねても言っている意味と文章のつながりが取れず、実際に起きている事件とは全く関係のない話が延々続き、むしろ、主題がそちらに摩り替わっていく。錯綜する流れは、まるで自然的解決を拒んでいるようで、人口的な迷路に、次第に目が回ってくる。
ここまでページを繰る手が止まらなかった小説も珍しい。ミステリアスな設定を作り、手に汗握る展開も忘れず、それでいて完全に作りこまれた世界観と、情景。「いいんですよ、私がします…そんなの、ふるいにかければ、すぐだから」という言葉に震えた。
9:異邦人(アルベール・カミュ)
フランス文学とは何ですか、と聞かれたら、異邦人が一番頭に出てくる。これは、訳し方の問題なのだけれども、やはり【今日ママンが死んだ】という始まり方は、なんとなくフランス的で、美しい。内在する不条理観を我々に突きつけ、自らの存在する意義について、考えさせられる。殺人の理由に【太陽が眩しかったから】と答えた主人公の心情をはかって、心が打たれる。
「好きだ!」と主張すると、これだから中二病は、と返されてしまいがちな現代における太宰治の人間失格も、当時おいては美しい叙事詩のようなものだったのではないだろうか、と思う。実際、太宰治研究などを読んでいると、彼は死ぬ気もさらさらなく、この鬱的心理状況こそが彼の言う【道化】であった、というようなことが当時の彼の生活から伺えると書いてある。私もそうなんじゃないかな、と思う。それでも、この自己を完全に卑下する、私小説スタイルは、現代の日本文学にも大きく跡を残している、と思うのだ。
ここから順不同。
心に残った小説を挙げてみた。
12正義と微笑(太宰治)
13斜陽(太宰治)
17太陽のない街(徳永直)
22陰翳礼讃(谷崎潤一郎)
23無常といふ事(小林秀雄)
24白痴(坂口安吾)
25死霊(埴谷雄高)
27燃え尽きた地図(安部公房)
28ジョンレノン対火星人(高橋源一郎)
34くっすん大黒(町田康)
36自由死刑(島田雅彦)
37僕は模造人間(島田雅彦)
38彗星の住人(島田雅彦)
39美しい魂(島田雅彦)
40エトロフの恋(島田雅彦)
46スティルライフ(池澤夏樹)
47ダンスダンスダンス(村上春樹)
48世界の終わりとハードボイルドワンダーランド(村上春樹)
50コインロッカーベイビーズ(村上龍)
51よもつひらさか往還(倉橋由美子)
55虚無への供物(中井英夫)
57少女地獄(夢野久作)
58死者を鞭打て(鮎川哲也)
61霧越邸殺人事件(綾辻行人)
62殺戮にいたる病(我孫子武丸)
63翼ある闇(麻耶雄嵩)
64夏と冬の奏鳴曲(麻耶雄嵩)
67生ける屍の死(山口雅也)
68奇偶(山口雅也)
69夏と花火と私の死体(乙一)
70ZOO(乙一)
72今はもうない(森博嗣)
74慟哭(貫井徳郎)
75消失!(中西智明)
76クリスマステロル(佐藤友哉)
77クビシメロマンチスト(西尾維新)
78イニシエーションラブ(乾くるみ)
79オーデュボンの祈り(伊坂幸太郎)
80サウスバウンド(奥田英朗)
81最悪(奥田英朗)
83黒い家(貴志祐介)
84パラサイトイブ(瀬名秀明)
85BRAINVALLEY(瀬名秀明)
86幻滅(オノレ・ド・バルザック)
88従妹ベット(オノレ・ド・バルザック)
89シャベール大佐(オノレ・ド・バルザック)
90ラブイユーズ(オノレ・ド・バルザック)
91従兄ポンス(オノレ・ド・バルザック)
92ウージェニ・グランデ(オノレ・ド・バルザック)
93ヴォヴァリ夫人(フローベル)
94ノートルダムの背虫男(ヴィクトル・ユゴ)
95星の王子様(サン・テグジュペリ)
96眼球譚(ジョルジュ・バタイユ)
97花粉(ノヴァーリス)
101失われた時を求めて(マルセル・プルースト)
102マノンレスコ(アヴェ・プレヴォ)
103悪徳の栄え(マルキド・サド)
104ソドム百二十日あるいは淫蕩学校(マルキド・サド)
105半獣神の午後(ステファヌ・マラルメ)
106骰子一擲(ステファヌ・マラルメ)
107恐るべき子供たち(ジャン・コクト)
108テスト氏(ポール・ヴァレリ)
109マルドロールの詩(ロートレアモン)
112異邦人(アルベール・カミュ)
113ペスト(アルベール・カミュ)
114水入らず(サルトル)
115カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキ)
116地下室の手記(ドストエフスキ)
117白痴(ドストエフスキ)
119アンナ・カレニーナ(トルストイ)
120ロリータ(ナボコフ)
121城(フランツ・カフカ)
122変身(フランツ・カフカ)
125老人と海(アーネスト・ヘミングウェイ)
126グレートギャッツビ(スコット・フィッツェジェラルド)
127バビロンに帰る(スコット・フィッツェジェラルド)
128幸福な王子(オスカ・ワイルド)
129ワインズバーグオハイオ(シャーウッド・アンダソン)
130サンクチュアリ(ウィリアム・フォークナ)
131伝奇集(ホルヘ・ルイス・ボルヘイス)
133フェネガンズウェイク(ジェイムス・ジョイス)
134ダブリン市民(ジェイムス・ジョイス)
138第三の男(グレアム・グリーン)
139負けたものがみな貰う(グレアム・グリーン)
14021の短編(グレアム・グリーン)
142モルグ街の殺人(エドガー・アラン・ポー)
143813(モーリス・ルブラン)
144輝く断片(シオドア・スタージョン)
145幻の女(ウィリアム・アイリッシュ)
146Yの悲劇(エラリィ・クイーン)
147火刑法廷(ディクスン・カー)
148三つの棺(ディクスン・カー)
149偽のデュー警部(ピータ・ラヴセイ)
150あなたに似た人(ロアルド・ダール)
151来訪者(ロアルド・ダール)
152アクロイド殺し(アガサ・クリスティ)
153そして誰もいなくなった(アガサ:クリスティ)
154オリエント急行殺人事件(アガサ・クリスティ)
155長いお別れ(レイモンド・チャンドラ)
156郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす(ジェイムズ・ケイン)
157くたばれ健康法(アラン・グリーン)
158時の娘(ジョセフィン・テイ)
159黄色い部屋の秘密(ガストン・ルル)
160荊の城(サラ・ウォーターズ)
161アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(フィリップ・ディック)
162鋼鉄都市(アイザック・アシモフ)
完全に100とか越えてるという。
しかもまだまだ心に残ってるのがあるという。
最近、世の中が不思議でありません。
何故、こんなにも素晴らしいもので世界は溢れているのでしょう。