夏と扇風機

気が狂いそうな暑さがこの何日か続いていて、別に夏としては大した事ないんだろうけど、九月=夏の終わり、という確かな方程式が心中に存在する私にとって、この暑さは弱体化しつつあるこの身体に余計に響くのである。

こう言ってはなんだが、私の部屋にはエアコンディショナという物が存在しない。すなわち、いわゆるパンツ一丁の姿で常に部屋を徘徊し、扇風機をセカセカ回しては身体いっぱいに風を受けて暑さを凌ぐ始末、これは夏以前の問題なのだが、色々とお金の問題を考えると贅沢は言っていられない。

ところが先日、ちょっと人工的な風で暑さを紛らわせながら勉学にでも勤しむか、と扇風機のスイッチをオンにすると、ガタガタという音と共に突然羽が勢いよく吹っ飛び床のあっちこっちに破片が散らばったのであり、本体の方はいったいどうなっているのかと見てみると、完全に消え失せた羽の残りカスがカラカラと回っているのみで、簡単に言うと、最後の頼みの綱がぶっ壊れてしまったのである。

で、夏も終わろうかと言う頃に扇風機があの世に逝ってしまったのだが、さすがにこれから扇風機を買うのは無駄に思われたし、財布の状況を考えるに出費はなるべく抑えたい、それにまぁ、しかしもう九月だし扇風機くらいなくても生きていけるだろう、と浅はかな考えで新学期に臨んだ結果が今の惨状。この齢にして早くも人生を諦めたくなってきた。


そんなわけで、この糞暑い東京の残暑を裸で過ごし、小さい秋小さい秋見つけた、とばかりにトンボを発見するたび喜び、そして涼しさを切望するのだが、このとろけるような暑さはまだまだ続くようだ。